抑圧が生み出した悲しき傑作、「象は静かに座っている」 ─ その4【完】
『本作に流れる、2つのストーリー』 今作には表のストーリーに加え、もう一つの裏テーマがあり、それが作品に圧倒的な深みをもたらしていると個人的には思っています。それではまず表のテーマとは何か? それはこれまで述べてきた現代...
『本作に流れる、2つのストーリー』 今作には表のストーリーに加え、もう一つの裏テーマがあり、それが作品に圧倒的な深みをもたらしていると個人的には思っています。それではまず表のテーマとは何か? それはこれまで述べてきた現代...
『なぜ彼らは満州里を目指すのか?』 ブーとリン、ジンに彼の孫娘の4人は揃って中国の北の果て、満州里を目指します。しかしなぜ、満州里なのでしょう? もちろんそこに一日中座っている象がいるからなのですが、我々日本人には理解で...
『映像で語る、ということ』 その1でも書いたように今作では言葉は通常の意味を持ちません。映像こそが重要で、そこにこそ作者の意図が大きく込められている。それは中国共産党の検閲に対する対策でもあり、結果としてそれらが表現の圧...
『緻密に計算尽くされた、巨匠の作品』 2018年11月の日本公開(これを書いているのは2022年8月です)で合計234分=3時間54分、すなわち約4時間の超大作『象は静かに座っている』は公開当初、映画好きの間で結構な話題...
『老女=母親の影』 先に取り挙げた「犬殺し」に次いで、女性にまつわる表現の中、もうひとつ不可解なものとして、サムの部屋のバルコニーの対面に住んでいるトップレスの老女が挙げられます。彼女は何匹ものオウムを飼いながら暮らして...
『犬殺しは誰か?』 映画は冒頭、カフェの窓ガラスに落書きされた「BE WARE THE DOG KILLER(犬殺しに気をつけろ)」の文字を屋内から俯瞰するカットで始まります。やがてカメラは室内をぐるっと見渡し、ちょうど...
『青春 = マギーの没落』 この映画で象徴的なのが、その1でも取り上げた監督の処女作『アメリカン・スリープオーバー』が劇中内に登場し、上映されていることです。シーンで言うと墓地で開かれるレイトショーですね。ここは非常に手...
『一体この映画は何を撮っているのか?』 今作はこれまでのデヴィッド・ロバート・ミッチェル監督作品と比較すると、明らかに不可解で不明瞭。無駄も多く、チープに感じられます。しかもそれが140分もの間、観る人にとっては耐えがた...
『喪失とその先を描き続ける作家、デヴィッド・ロバート・ミッチェル』 21世紀の「スタンド・バイ・ミー」と呼ぶべき傑作、「アメリカン・スリープオーバー」に続き、「イット・フォローズ」の大ヒットで監督としての地位を確立したデ...
『あんたの話を聞かせてよ』 間宮邦彦はそう言って、被害者の心の隙間に入り込もうとします。話すのは俺じゃない、あんただ。そうやって人が普段心の奥底に隠している憎悪をあぶりだし、解放させ、殺人へと導いていく。憎悪は「夫婦(千...